スウェーデン映画『サーミの血』自分らしく生きるために逃げる

スウェーデン本国だけでなく、世界各国で数々の賞を受けた映画『サーミの血』が日本で公開されます。また、フクヤでは映画の半券表示で、実店舗にて割引のタイアップキャンペーンを行っています。キャンペーンについては最後にご紹介しています。

1930年代、スウェーデン北部のラップランドで暮らす先住民族、サーミ人は差別的な扱いを受けていた。サーミ語を禁じられた寄宿学校に通う少女エレ・マリャは成績も良く進学を望んだが、教師は「あなたたちの脳は文明に適応できない」と告げる。

そんなある日、エレはスウェーデン人のふりをして忍び込んだ夏祭りで都会的な少年ニクラスと出会い恋に落ちる。トナカイを飼いテントで暮らす生活から何とか抜け出したいと思っていたエレは、彼を頼って街に出た――。

2013年にJokkmokk(ヨックモック)というサーミの街の名が付けられたロールストランドの食器についてフクヤ通信に書いた時、サーミの衣装についてこのように書きました。

こんなに美しい衣装ですが、かつてはサーミ人に対する差別や軽視のため、身分を明かすことになる民族衣装を身に付ける人は減少し、作れる人も減ったそうです。それが、最近になり若い世代を中心に見直しがされ始め、徐々に着る人も増えてきたとか。

衣装について調べた時にサーミに対する偏見があったことを初めて知ったのですが、映画で語られた想像以上の差別描写に心が揺さぶられました。

映画は老人のクリスティーナが妹の葬儀に参列するため、家族と故郷のラップランドに渋々戻るところから始まります。自分の出身であるサーミの事を嘘つきで泥棒と罵るクリスティーナ。村に滞在することを嫌い、一人ホテルで過ごすクリスティーナが思い出すのは、妹や他のサーミの子どもたちと「移牧学校」で学んでいた少女時代。その頃のクリスティーナの名前はエレ・マリャ。彼女は故郷を離れたときに名前もスウェーデン風に変えていたのです。

「移牧学校」はスウェーデンがサーミ人をスウェーデン人の子どもと分離させるために作った学校。子どもたちは強制的に家族から離れさせられ、隔離された環境でサーミ語を禁止され、一歩学校の外に出ればスウェーデン人から激しい侮蔑を受ける日々に、ただひたすら耐えていました。エレ・マリャは成績が良く、スウェーデン語を誰よりも習得し、読書を好み、ウプサラから何やら偉い人たちが学校に来るときに、歓迎の言葉を述べる代表に選ばれたことを誇らしく思っていました。

けれども次のシーンで、その”お客様”たちの残酷な目的が示された時、エレ・マリャの屈辱と絶望が、重く観客の胸にも迫ってきます。

エレ・マリャは、それから何度も希望を持たされてはサーミだからと望みを絶たれ、観ているこちらまで胸がキリキリと傷むエピソードが繰り返されます。頭が良く勇気もガッツもあるエレ・マリャは、けれども、ただサーミだというだけで物のように扱われる状況を甘んじて受けるような少女ではありませんでした。彼女はサーミであれば叶えることのできない将来の夢を実現するためにも、サーミを捨てて出ていくことを決意します。それは閉じ込められた檻から逃げ出す野生動物にも似た、自分らしく生きるために不自由な環境から逃げる選択。

何十年ぶりに複雑な感情と共に故郷に戻り、亡くなった妹の思いを聞かされるエレ・マリャ。サーミであることを嫌い避け続けていた彼女は、自分の中のサーミの血とどう対峙するのか。無鉄砲にも思える少女の大胆な行動にハラハラしつつ、自分は差別の加害者になっているのではないかと、エレ・マリャを通して自らに問いかけ考えさせるような物語でした。

9月16日(土)より、新宿武蔵野館、アップリンク渋谷ほか全国順次公開。
その他の地域での上映スケジュールなど詳細は下記公式サイトからご確認ください。
映画「サーミの血」公式サイト

ミタ


◆映画情報
監督・脚本:アマンダ・シェーネル
音楽:クリスチャン・エイドネス・アナスン
出演:レーネ=セシリア・スパルロク、ミーア=エリーカ・スパルロク、マイ=ドリス・リンピ、ユリウス・フレイシャンデル、オッレ・サッリ、ハンナ・アルストロム
後援:スウェーデン大使館、ノルウェー王国大使館
配給・宣伝:アップリンク
(2016年/スウェーデン、ノルウェー、デンマーク/108分/南サーミ語、スウェーデン語/原題:Sameblod/DCP/シネマスコ―プ)
©2016 NORDISK FILM PRODUCTION


◆映画の半券提示で10%OFFのお得なサービス!
フクヤ実店舗にてお買い上げの方、10%割引!
期間:2017年9月16日(土)~10月15日(日)
詳しくは下記リンク先からどうぞ。
映画『サーミの血』タイアップ情報



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スウェーデン映画『いつも心はジャイアント』鑑賞券プレゼント

2016年にスウェーデン・アカデミー賞<作品賞>含む3部門受賞し、いよいよ8月19日の新宿シネマカリテを皮切りに全国で順次公開されるスウェーデン映画『いつもこころにジャイアント』をご紹介します。最後に鑑賞券プレゼント企画のお知らせがあります。
(C)2016 Garage Films SE .ALL RIGHTS RESERVED.

リカルドは頭骨が変形する難病を患い、施設で暮らしている。父はなく、母親も精神を病み、別の施設で過ごしている。母に会うことも出来ず、特異な見た目から差別の目に晒されてきたリカルドは、辛い日々のなか、自らを巨人化した不思議な世界を空想するようになっていた。

そんなリカルドの人生は、ペタンクという球技に出会い一変する。練習を通じて、親友のローランドやたくさんの仲間を得た彼は、ペタンクの北欧選手権に出場することを決意する。大会で優勝することが出来れば、きっと母親を元気を与え、いつか一緒に暮らす事が出来ると信じて―。
※公式サイトより

7月に試写会で本作品を観て、思ってもいなかった面白さに興奮し、家人に全ストーリーを語ったに留まらず、感想までもTweetしてしまいました。


日本の人には聞きなれない『ペタンク』は、スウェーデンに行くと公園で高齢者たちが競技を楽しんでいる光景を目にすることがあります。この写真は7月にスウェーデンのリンショーピンで撮ったもの。スウェーデンだけでなくヨーロッパでは人気の球技だとか。

ですので、てっきり日本のゲートボールのような高齢者スポーツだと思い込んでいたのですが、その思い込みを覆される映画でした。

リカルドは生まれつきの難病のため歩き方はヨタヨタとして、言葉をうまく発音出来ず、施設で暮らしているのですが、知的に問題はありません。頭脳球技ペタンクに打ち込み(メダルやトロフィーが映る場面で示されるように)かなりの実力の持ち主。北欧選手権で優勝することを夢見ています。ところが、その障害が原因で視野が狭いリカルドの参加は危険だからと、出場選手から外されてしまいました。

ペアを組んでいるチームメイトであり、親友でもあるローランドはその決定に激怒。所属チームを離れ、リカルドと二人だけのチーム『スッギ』を新たに結成し、大会に出場を決めます。
(C)2016 Garage Films SE .ALL RIGHTS RESERVED.

対戦相手の強豪デンマークチームのビデオを繰り返し見て研究し、練習場を使えないから公園に線を引いて暗くなるまで自主練習をする二人(観ている私の心の中でロッキーのテーマ曲が…)。そうして出場した大会本番では順調に勝ち進み、いよいよ優勝をかけてデンマークチームとの対戦となります。

スカジャンのような刺繍を背中に施したダサイベストの見た目イマイチなおっさん二人と、スポーティーな赤いユニフォームを身に着け若くしゅっとしたデンマークチームの対比を見ると、絶対やっつけてくれと判官贔屓な思いがムクムクと湧き上がります。
(C)2016 Garage Films SE .ALL RIGHTS RESERVED.

チーム『スッギ』が一球投げるたびに、映画を観ている私も思わずギュッと手を握ってしまう緊張感。見事に球がベストポジションに落ちると心の中で「やった!」と叫び、二人を甘く見て鼻持ちならない態度をとっていたデンマークチームが追い詰められ、顔がだんだん青くなっていくにつれ爽快感が沸き上がってきます。こうなると、すでにスポーツ映画を見ているようなカタルシス!
(C)2016 Garage Films SE .ALL RIGHTS RESERVED.

それだけでなく、ダサイおっさんの友情、複雑な状況での母と子の愛情、困難(障害)に耐える夢見る力といった、ヒューマンドラマの様々な要素が一本の映画にギュッと詰まっている贅沢な物語。

監督が「これは疎外感とそれに耐える方法について描いた作品」と語っています。人が誰でも感じる不幸や惨めな気持ちと、それと戦う物語は、どんな人の心にも響くでしょう。他にも恵まれた福祉国家の側面も垣間見られ、スウェーデン社会に興味がある方にもおすすめです。

スチール写真から「うわ、重そう…」と敬遠するにはもったいない映画です。上映スケジュールなど詳細は下記リンク先の公式サイトをご確認ください。
『いつも心はジャイアント』公式サイト

最後に鑑賞券プレゼントのお知らせです。


【プレゼント】スウェーデン映画『いつも心はジャイアント』の鑑賞券を3組6名さまに!



下記の条件を満たした3組6名様に、スウェーデン映画『いつも心はジャイアント』の鑑賞券をプレゼントします。

1)フクヤのインスタグラムをフォロー!
https://www.instagram.com/fukuya_20cmd/

2)フクヤのインスタグラムの投稿の中から好きな写真をリポスト!
@fukuya_20cmd を本文にタグ付け
本文に
@fukuya_20cmd
#フクヤジャイアントプレゼント
#fukuya北欧
の3つを記載。

当選された場合インスタグラムのダイレクトメールより、お名前とご住所をお知らせ頂きます。
頂いた個人情報は景品の送付以外に使用いたしません。

応募締め切りは8月24日、チケットの発送は8月26日を予定します。

今回はインスタグラムだけのキャンペーンです。アカウントをお持ちになっていない方は応募が出来ないのですが、どうぞご了承ください。
それでは応募をお待ちしています!

ミタ


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アイスランド映画『ハートストーン』死と再生

世界各国で数々の賞を受賞したアイスランド映画『ハートストーン』が、7月15日(土)よりYEBISU GARDEN CINEMAほか全国で順次ロードショーされます。先月、試写会で一足早く観てきました。
(C)SF Studios Production & Join Motion Pictures Photo Roxana Reiss

東アイスランドの美しく雄大な自然が広がる小さな漁村、ソールとクリスティアンは幼なじみでいつも一緒の大親友。ソールは美しい母、そして自由奔放なラケルと芸術家肌のハフディス、対照的な二人の姉妹に囲まれて暮らしている。

思春期にさしかかり、ソールは大人びた美少女ベータのことが気になりはじめる。クリスティアンはそんなソールの気持ちを知り二人が上手くいくよう後押しする。そしてクリスティアン自身もベータの女友だちハンスからの好意を受けとめ、4人は行動を共にするようになる。自然とソールとベータの距離は縮まり二人は心を通わせ合う。ただそこには二人を見守りつつ複雑な表情を浮かべるクリスティアンがいた…。

『ハート・ストーン』はアイスランドの寒村を舞台に、夏休みの間に様々な経験を経て、少年が大人へと近づいていく姿を描いています。物語は埠頭で半裸で寝ころび、退屈そうに短い夏の美しい光を浴びている少年たちの姿から始まります。彼らを一変させるのは、突然現れた魚の群れ。慣れた手つきで何匹も釣り上げ、興奮しながら釣り上げた魚を突堤に打ち付け息の根を止める少年たち。

冒頭に描かれた、突然の死と破壊のイメージはこの後も物語の中で澱のように漂っていきます。

(C)SF Studios Production & Join Motion Pictures Photo Roxana Reiss

幼いころからいつも一緒で仲のいいソールとクリスティアン。ソール(Thor)の名は北欧神話の主要な神の一人、勇ましい戦神であり雷神のトールにちなんでいるのでしょう。クリスティアン(Kristján)の名はクリスチャン、いわゆるキリスト教徒を意味するのですが、欧州では広く使われているごく一般的な男性名です。

同い年の2人ですが、既に成熟しているクリスティアンに比べ、ソールはまだ幼く、それが彼の密かな悩みの種となっています。一方、クリスティアンも人には言えない深い苦しみを抱えています。

ソールより体は成長はしていてもどこか線の細いクリスティアンを活発なソールはいつもリードし、クリスティアンは親友ソールの恋をかなえてあげたいとあれこれ画策します。やがて、ソールへのクリスティアンの好意は友情を超えていること、それがクリスティアンの葛藤であることが観客に明らかになっていきます。

クリスティアンが性的マイノリティであることを隠しても、小さく閉鎖されたコミュニティの中では誰もが知ることとなっていて、彼に対する態度にどことなく現れています。更にゲイ嫌いの父親に暴力を受け、追い詰められていくクリスティアン。

クリスティアンの気持ちに気が付き、一旦は態度がぎこちなくなったソールですが、ある事件をきっかけにクリスティアンを庇って(戦神トールの名にふさわしく)戦い、その後二人は再会します。

二人のこれからはどうなっていくのか。キリスト教徒が自らを神に捧げるように、ソールに献身をしたクリスティアン。彼のこの先は、キリストが死から復活したことを思いださせるエピソード、物語の初めに無残に唾を吐きつけられ踏みつけられたある物が再び登場し蘇る形で暗示されます。

辛かったり、みじめだったり、叩きのめされ、壊されても、また始められる…。少年たちが北欧の短いひと夏に経験する、生と死、そして再生を、厳しくも美しいアイスランドの自然と共に描いた物語です。


映画『ハート・ストーン』では毎週プレゼントが当たるTwitterキャンペーンを7月28日まで開催しています。詳しくは下記リンク先からどうぞ。
http://www.magichour.co.jp/heartstone/campaign/



★公開情報★
監督・脚本:グズムンドゥル・アルナル・グズムンドソン
出演:バルドル・エイナルソン、ブラーイル・ヒンリクソン、ディルヤゥ・ワルスドッティル、カトラ・ニャルスドッティル、ニーナ・ドッグ・フィリップスドッティル
2016/アイスランド,デンマーク/HD/アイスランド語/カラー/129分/シネマスコープ/5.1ch
原題:Hjartasteinn/英題:Heartstone
日本語字幕:岩辺いずみ
後援:アイスランド大使館
配給・宣伝:マジックアワー
(C)2016 SF STUDIOS PRODUCTION APS-JOIN MOTION PICTURES EHF 2016
公式サイト:www.magichour.co.jp/heartstone/

★受賞歴★
第73回ベネチア国際映画祭 クィア獅子賞(最優秀LGBT映画)受賞
第52回シカゴ国際映画祭 ゴールドQヒューゴ賞(最優秀LGBT映画)受賞
第32回ワルシャワ国際映画祭 最優秀監督賞、男優賞スペシャルメンション、エキュメニカル賞受賞
第46回キエフ国際映画祭 観客賞、男優賞スペシャルメンション、国際映画批評家連盟賞受賞
第58回リューベック・ノルディック映画祭 最優秀作品賞受賞
第8回CPH:PIX 観客賞受賞
第13回セビリア・ヨーロッパ映画祭 平和へのオコナ賞(最優秀LGBT映画)受賞
第57回テッサロニキ国際映画祭 審査員特別賞受賞
第16回マラケシュ国際映画祭 最優秀主演男優賞受賞
第27回トロムソ国際映画祭 ドン・キホーテ賞 受賞
第40回ヨーテボリ国際映画祭 最優秀プロデューサー賞 受賞
第29回アンジェ映画祭 最優秀作品賞、観客賞、ヤング審査員賞 受賞
第34回アノネー国際映画祭 ヤング審査員賞、特別審査員賞 受賞
第45回ベオグラード国際映画祭 審査員賞、最優秀デビュー映画賞 受賞
第17回プエルトバジャルタ国際映画祭 PREMIO MAGUEYスペシャルメンション
第34回BUFF国際映画祭 スウェーデンの教会賞 受賞
シネマ・スカンジナビア賞2016 年間最優秀北欧映画、最高人気監督、最高人気アイスランド映画 受賞
スコープ100配給映画賞 受賞(スウェーデン、ポルトガル) 
第19回EDDA賞(アイスランドアカデミー賞)9部門受賞
  作品賞、監督賞、脚本賞、撮影賞、編集賞、美術賞、衣装賞、主演男優賞、助演女優賞
第24回プラハ国際映画祭 最優秀作品賞 受賞
第11回ダラス国際映画祭 最優秀監督賞 受賞
第33回WICKED QUEERボストンLGBT映画祭 最優秀劇映画審査員賞 受賞
第14回クロッシング ヨーロッパ映画祭 観客賞受賞


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映画『こころに剣士を』タイアップキャンペーンでミトンをもらおう!

先日ご紹介したエストニア映画『こころに剣士を』がいよいよ明日の12月24日から公開されます。

映画の中でエストニアのミトンが主役のエンデルと恋人のカドリをつなげる小物として登場しているんですよ。そこでそれにちなんで、エストニアミトンの割引とプレゼントキャンペーンを、『こころに剣士』さんとタイアップして行います!

キャンペーンは下記の通り2種類。
その1)『こころに剣士を』の半券をお持ちいただいた方にエストニアミトンを店頭にて10%オフ!

その2)抽選で1名さまにエストニアミトンをプレゼント!
プレゼントへの応募方法は二通り。一つは、お葉書にてのご応募、もう一つは下記Tweetをリツイートして『こころに剣士を』公式Twitterアカウントをフォローする方法です。


お葉書での応募方法については下記リンク先に詳細があります。どうぞこちらからご確認ください。ミトンプレゼント以外にも様々な特典がありますよ。
『こころに剣士を』北欧の魅力が詰まったタイアップ決定!

劇場などの詳細は下記のリンク先からご覧ください。
『こころに剣士を』公式サイト

ミタ


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映画『こころに剣士を』逃げちゃだめだ

フィンランドのお隣、バルト三国のひとつであるエストニアの映画『こころに剣士を』を公開に先駆けて鑑賞しました。『ヤコブへの手紙』のフィンランド人監督、クラウス・ハロによる2015年の作品。アカデミー賞の外国語映画賞フィンランド代表作品に選ばれています。

現代においても小国はしばしば大国の政治に巻き込まれ、国民は否応なしに翻弄されてしまいます。物語の舞台となるエストニアもその一つ。これは1950年代初頭にドイツとソ連(現ロシア)に運命を翻弄された実在のフェンシング選手の実話をベースに作られた物語です。

エストニアは1940年ソ連により武力併合されました。第二次世界大戦でナチス・ドイツが侵攻してくると、ソ連の圧政から逃れるため、むしろそれを歓迎しドイツ軍に加わる人も現れます。ドイツが負けて終戦となり、ソビエト連邦に再度吸収されたとき、ソ連はドイツ軍に所属していたエストニア人を戦争犯罪人として追放、投獄しました。物語の主役であるエンデルも、ドイツ軍側であったために追われる一人です。

フェンシングの有名選手であった彼は、ソ連の秘密警察から身を隠すため、片田舎のハープサルの中学校で体育教師としての職を得、仕方なく子供たちにフェンシングを教え始めます。

いつ誰が強制収容所に連れて行かれるか分からない、隣人も信用できない鬱屈した暮らしで、暗い表情をしていた子供たちはフェンシングに没頭することで次第に表情に明るさが戻ってきます。父親を収容所へ連れて行かれた少女マルタはエンデルを父のように慕い、父も祖父も収容所へ奪われた少年ヤーンは祖父の残した剣を手に練習に励むことで重い現実を振り払おうとします。

1年ほど経ったある日、子供たちはソ連のレニングラードで開催される大会に出たいとエンデルに訴えます。エンデルがレニングラードに行けばソ連に逮捕される危険がある、けれども大会に出ないと子供たちの信頼や希望を断ち切ることになる。エンデルは迷い、葛藤し、一度は出場しないと決めたものの、思いとどまり、大会に出ることを選択します。

子どもたちの試合の行方は?そしてエンデルの運命は?

激しい銃撃戦があるわけでも、派手な逃亡劇があるわけでもなく、物語は静かに、淡々と進んでいきます。それだけに、暗闇の足音、不意の訪問者に、いよいよその日が来たかと顔色が変わるエンデルの緊張感がひたひたと心に迫ってきます。

気を緩めることのできない日々の暮らしの気持ちを支えているのが、子ども嫌いの彼が隠れ蓑としている教師の仕事で出会った子どもたちの成長。他に楽しみもないのでしょう。厳しい指導にもついていき、熱心にフェンシングを練習して、彼を慕う子どもたちの可愛らしいこと。

大会のためレニングラードに行くことを、同僚の教師であり恋人のカドリが「捕まってしまう」と反対すると「もう逃げるのは嫌なんだ」と答えるエンデル。それは試合で、圧倒的に優位な敵の選手と対した子供へ「引くな、前へ進め」と指導する自分の言葉と重なります。

逃げちゃだめだ、それはエンデルが子供たちに教えた事であり、子供たちからエンデルが教わった事。右手に剣を持ち、左手を高く掲げて、まっすぐ相手に向かい、前を見て進む。逆境に立ち向かう、こころの中の剣士を奮い立たせてくれる映画です。

2016年12月24日からヒューマントラスト有楽町他、全国で公開予定。劇場、上映スケジュールなど詳細は下記リンク先の公式サイトからご確認ください。
『こころに剣士を』公式サイト
また、フクヤではペア割引券を、店頭、あるいはネットでお買い物の方に差し上げています。ご注文の際にはお忘れなくお申し込み下さい。


© 2015 MAKING MOVIES/KICK FILM GmbH/ALLFILM
原題:THE FENCER
監督:クラウス・ハロ/99分
出演:マルト・アヴァンディ、ウルスラ・ラタセップ、レンビット・ウルフサク、リーサ・コッペル、ヨーナス・コッフ
フィンランド/エストニア/ドイツ合作 カラー シネスコ 
配給:東北新社 STAR CHANNEL MOVIES

ミタ

ソ連の圧政から逃れるためにエストニアから小さな漁船で荒海に乗り出し、スウェーデンに亡命する人たちがいました。ウプサラ・エクビィのデザイナーであるマリ・シムルソン、そして映画の舞台と同じハープサル出身のイラストレーターのイロン・ヴィークランドもその一人。ヴィークランドは「長くつ下のピッピ」で知られるアストリッド・リンドグレーンに信頼され、「やかまし村の子どもたち」シリーズなど多くの作品に挿絵を描いています。彼女は自伝絵本「ながいながい旅」でエストニアからスウェーデンに至る少女時代の話を描いています。


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